ホームナレッジ / 商談前の企業下調べのやり方|1社を深く調べて攻め方を決める手順

商談前の​企業下​調べの​やり方​|​1社を​深く​調べて​攻め方を​決める​手順

商談前の下調べは、取引可否を審査する与信調査とは目的が別物で、狙いは「攻め方を決める」ことです。見るべき情報源6つ、EDINETとgBizINFOで何を見るか、30分で一巡する分単位のチェックリスト、要点シートの項目立て、AIエージェントで全商談に標準装備する方法、外注の判断基準を整理します。

著者: 村山 悠太(ゴムマリ) 最終更新: 2026年7月

目次
  1. 下調べの目的は「攻め方を決める」こと
  2. 見るべき情報源は6つ
  3. 時間を区切って一巡する——下調べの型
  4. 製造業での観点例
  5. まとめ書式に落とす——要点シートの項目
  6. よくある失敗
  7. AIエージェントで変わること——全商談に標準装備できる
  8. 外注する場合の判断基準
  9. よくある質問
  10. 次の一歩

商談前の企業下調べとは、相手企業の公開情報から「この会社に、何を、どの切り口で提案するか」を決めるための準備です。取引可否を審査する与信調査・信用調査とは目的が別物です。この記事は、下調べが担当者の裁量任せになっているBtoB営業の責任者・営業企画に向けて、見るべき情報源、30分で一巡する型、要点シートへの落とし方、全商談に標準装備する方法までを示します。

下​調べの​目的は​「攻め方を​決める」こと

初回商談が薄くなるのは、営業の話術の問題ではありません。攻め方が決まらないまま会っているからです。下調べは攻め方を決める工程です——相手の事業のどこに自社が効くのか、誰が判断に関わりそうか、直近のどんな変化が商機なのか。ここが白紙のまま商談に入ると、初回訪問が「御用聞きヒアリング」で終わり、二回目につながりません。

見るべき情報源は​6つ

情報源は集めることが目的ではなく、それぞれで「何を読むか」を決めておくことが肝心です。以下の6つは、いずれも無料で当たれます。

  1. 公式サイト: 事業・製品・拠点・沿革でまず全体像をつかみます。読むポイントは、主力製品がどの顧客層に向くか、沿革の直近に買収・新設・移転がないか。
  2. 採用ページ・求人情報: どの職種を、どの勤務地で増やしているかは、投資領域がどこかの生きた手がかりです。開発職の募集が続けば製品強化、営業職なら販路拡大、と読み替えます。
  3. ニュース・プレスリリース: 直近の変化(新拠点・新製品・提携)は「なぜ今この会社か」の根拠になります。上場企業の速報は、適時開示システムTDnetでも追えます。
  4. 開示資料(EDINET): 上場企業や提出義務のある企業なら、金融庁が運営する電子開示システムEDINETで有価証券報告書を無料で閲覧できます(ユーザー登録は不要)。読むポイントは「事業等のリスク」と「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」——会社自身が言語化した課題が、そのまま提案の切り口になります。セグメント情報で稼ぎ頭の事業が、従業員の状況で組織の規模がわかります。
  5. 官公データ(gBizINFO・法人番号公表サイト): 経済産業省のgBizINFOは、政府が保有する法人データを法人番号に紐付けて無料公開するサイトです。法人プロフィールには、資本金・従業員数・代表者に加え、補助金交付情報・政府調達情報・届出認定情報・表彰情報・特許情報が一括で載ります。読むポイントは補助金交付と調達の実績——財務が非開示の非上場企業でも、直近で何に資金を得て何を納入したかが読めます。
  6. 技術発信・SNS: 製造業なら展示会出展や技術ブログに、現場の関心が表れます。特許情報はgBizINFOにも収載され(特許庁系のJ-PlatPatが取得元)、技術投資の方向を裏取りできます。

EDINETとgBizINFOの押さえどころ

有価証券報告書は事業年度終了後90日以内に提出されるため、EDINETでは最新版と訂正報告書の有無を必ず確認します。訂正報告書は元の書類とは別に提出されるので、元書類だけを見ると古い数字で臨むことになります。EDINETコードは非上場企業・投資法人・ファンドにも付与され、社名変更や合併があっても基本的に変わらないため、証券コードのない相手や提出履歴の追跡に使えます。

gBizINFOは2026年1月に更改され、キーワードを入れるだけのフリーワード検索が実装されました。法人情報はCSV等の形式でダウンロードでき、REST API(V2)でも取得できます。掲載元はEDINET・jGrants(補助金)・調達ポータル・J-PlatPat(特許)・インターネット官報など、府省庁のオープンデータです。

時間を​区切って​一巡する​——​下​調べの​型

だらだら調べないために、1社あたりの時間を30分と決め、分単位で区切って一巡します。各枠で「使う情報源」と「書き留めること」を固定しておくと、迷いが消えます。

経過時間やること主に使う情報源書き留めること
0〜5分事業・主力製品・顧客層をつかむ公式サイト(事業/製品/沿革)何を、誰に売る会社か
5〜10分規模と体制を裏取りするgBizINFO(資本金・従業員数・代表者)、法人番号公表サイト規模・拠点・代表者
10〜16分投資領域のシグナルを拾う採用ページ(増やす職種)、gBizINFO(補助金交付・調達・届出認定)どこに人と資金を割いているか
16〜22分直近の変化をつかむプレスリリース、EDINETの臨時報告書新拠点・新製品・提携・役員の異動
22〜27分課題の構造を確かめる(提出義務企業のみ)EDINET有価証券報告書の「事業等のリスク」「対処すべき課題」会社自身が挙げる課題
27〜30分仮説と質問に変換するここまでのメモ効きそうな課題の仮説/商談で確かめる質問

肝心なのは最後の枠です。事実を集めるだけの下調べは、商談の場で使えません。「自社が効きそうな課題の仮説」と「商談で確かめる質問」に変換して初めて、攻め方が決まります。

製造業での​観点例

製造業を調べるときは、上の型に技術面の枠を足します。有価証券報告書があれば「研究開発活動」と「設備の状況」で技術投資と生産能力の方向を、gBizINFOの特許情報と表彰情報で技術の強みを裏取りします。展示会の出展履歴と技術ブログは、現場が今どのテーマに関心を寄せているかの一次情報です。補助金交付情報でものづくり系の採択が見えれば、直近の設備投資や新ラインの仮説につながります。

まとめ書式に​落とす——​要点シートの​項目

集めた事実は、商談前に一枚の要点シートへ落とすと使えます。項目は次の6つに固定します。

  • 会社概要: 事業・主力製品・顧客層を各1行で。
  • 規模と体制: 従業員数・拠点・代表者と、組織の規模感。
  • 直近の変化: 出典と日付をつけた箇条書きで。
  • 効きそうな課題の仮説: 自社が効く一点に絞る。
  • 商談で確かめる質問: 仮説を検証する問いを2〜3本。
  • 出典リンク一覧: 商談後にたどれるよう、参照したURLを残す。

よく​ある​失敗

  • 事実を集めるだけで、仮説と質問に変換しないまま商談に入る。型の最後の枠が空欄なら、下調べは半分しか終わっていません。
  • 全情報源を毎回すべて見て時間箱を超え、下調べ自体が続かなくなる。30分で切り、足りなければ商談で聞くと割り切ります。
  • EDINETで訂正前や古い書類を見てしまう。訂正報告書は別に提出されるため、最新版と訂正履歴を確認しないと古い数字で臨むことになります。
  • 非上場企業に有価証券報告書を探して空振りする。EDINETは提出義務のある企業が対象なので、それ以外はgBizINFOと公式サイトに切り替えます。
  • 参照したURLを控えず、商談後に出典をたどれなくなる。要点シートの出典欄に必ず残します。

AIエージェントで​変わる​こと——​全商談に​標準装備できる

型があっても、人手の下調べは「時間のある商談だけ」「得意な担当だけ」になりがちです。AIエージェントに型を渡せば、6項目の情報収集と下書きを全商談・毎回・同じ基準で用意し、出典つきで営業に渡せます。人の仕事は、下書きの検品と、課題の仮説を自分の言葉に磨き直すことに変わります。事実集めをAIに、判断を人に——この分担なら、下調べの標準装備は現実的です。

外注する​場合の​判断基準

商談の数が少なく、大型案件中心なら、担当者が型に沿って自力で調べるのが最善です。商談数が多い、または展示会後のように一時に大量のフォローが要る場合は、外に出す価値があります。あたる先と攻め方が決まってから会う——それだけで商談の歩留まりは変わります。企業調査を外部レポートで賄う場合の費用感は営業リスト作成・企業調査の費用まとめにまとめています。ゴムマリでは、リスト全体の下調べと商談用の要点整理をリードエンリッチとして成果物単位で提供しています(貴社専用の調査項目にも対応・出典つき納品)。

よく​ある​質問

与信調査とは何が違うのですか?

与信は「取引してよいか」の審査で、財務・支払い能力が中心です。商談前下調べは「どう提案するか」の準備で、事業・組織・変化が中心です。目的が違うため、見る情報も成果物も別物です。

下調べに時間をかけるほど受注率は上がりますか?

かけた時間ではなく、仮説と質問に変換できたかで決まります。型の最後の枠が書けていれば、収集にかける時間は絞れます。

非上場の中小企業は、開示資料がなくて調べられないのでは?

有価証券報告書がなくても、gBizINFOで資本金・従業員数・代表者に加え、補助金交付・政府調達・届出認定・表彰の実績が無料で引けます。開示義務がない企業でも、官公データで規模と直近の動きの手がかりは取れます。

EDINETとgBizINFOはどう使い分けますか?

gBizINFOは全法人の基礎情報と補助金・調達・表彰の実績を広く押さえる用途、EDINETは提出義務企業の課題・リスク・セグメントまで踏み込む用途です。まずgBizINFOで規模と動きを掴み、上場・提出義務企業ならEDINETで課題まで読みます。

1件から頼めますか?

1リストからで、件数の下限はありません。まず直近の展示会名刺や休眠リストなど、対象が明確な1件で試すのが確実です。

次の​一歩

まず、直近の商談3件について「自社が効きそうな課題の仮説」が事前に書けていたかを振り返ってください。書けていなければ、型から整える価値があります。下調べの標準装備を任せる場合は、相談から商談数と現状の準備方法を教えてください。

関連記事: 展示会の名刺の山を、商談準備済みのリストに変えるデータエンリッチメントとは「次にどこへ行くべきか」を受注実績から導く

この記事を書いた人

代表 村山悠太のポートレート

村山 悠太(ゴムマリ代表)

国産大手ERPベンダーで新卒からERPのエンタープライズ営業・プリセールス・導入コンサル、外資系SaaSでパートナーセールス部門の立ち上げ、国内大手放送局で新規事業開発(通販カタログ事業)、AIスタートアップ2社でビジネスサイドの要職を歴任。2024年10月から生成AIを自ら実装し、2025年にゴムマリ株式会社を設立。

現在は自らAIエージェントを実装するFDE。評価セット設計・専門家監修・Go/No-Go判定、CRM・会計・社内DBとの統合、減った時間の実測まで一貫します。要件から、運用まで——AIエージェントが、現場で成果を出す仕組みを。

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