ホームナレッジ / 失注分析では、営業の最大の取りこぼしは見えない——引合約2,000件の全件分析でわかったこと

失注分析では、​営業の​最大の​取り​こぼしは​見えない​——​引合約2,000件の​全件​分析で​わかった​こと

大手製造業の営業部門で、SFA(Salesforce)の引合データ約2,000件を全件分析した実例。競合に負けた失注は約50件のみで、最大の漏れは敗因が記録されない「消滅」クローズ約1,000件(半数以上)でした。担当約10名の実力を客層補正つきで序列化した方法まで解説します。数字は特定を避けるため丸めています。

著者: 村山 悠太(ゴムマリ) 最終更新: 2026年7月

この記事でわかること

  • 敗因が記録される「失注」は氷山の一角——実例では失注約50件に対し、フォロー切れ等の「消滅」が約1,000件(引合全体の半数以上)
  • 受注率の単純比較は営業力の評価にならない——客層(顧客ランク構成)で補正しないと、客層の有利さを実力と取り違える
  • 上位営業の型は一色ではない——量・質・開拓の3タイプが存在し、それぞれが横展開の教材になる
目次
  1. 事例の概要(30秒)
  2. 発見1——最大の漏れは「失注」の外にあった
  3. 発見2——受注率の高い人が、実力のある人とは限らない
  4. 発見3——上位の営業は、一つの型ではない
  5. 自力でやる場合——SFAの標準レポートでどこまでできるか
  6. 外注する場合の判断基準と費用
  7. よくある質問
  8. 次の一歩

営業の取りこぼしを探すとき、多くの組織は失注分析から始めます。しかし、大手製造業の営業部門でSFA(Salesforce)の引合データ約2,000件を全件分析したところ、競合に負けた失注は約50件のみで、最大の漏れは敗因が記録されないまま閉じられた「消滅」クローズ約1,000件——引合全体の半数以上——でした。この記事は、その実例で「何を・どう分析し・何がわかったか」を書きます(数字は特定を避けるため丸めています)。読み手は、SFAを導入したもののデータが意思決定に使われていないと感じている営業部門の責任者・経営企画の方です。

事例の​概要​(30秒)

対象は大手製造業の営業部門。SFAは導入済みで、引合・活動・取引先の標準レポートは日々蓄積されていました。渡していただいたのはそのエクスポートだけで、追加のデータ入力は一切ありません。分析したのは、多年度の引合約2,000件と、直近5ヶ月の活動データ約2,000件。納品したのは、取りこぼし案件の発掘リストと、営業担当約10名の実力評価(客層補正つき)です。

発見1——​最大の​漏れは​「失注」の​外に​あった

失注は、敗因を記録して閉じる正式なクローズです。ところが実データでは、競合に負けた失注は約50件しかありませんでした。一方で、敗因の記録なくいつの間にか閉じられた「消滅」クローズは約1,000件。引合全体の半数以上が、分析対象にすら上がらない形で消えていました。

さらに消滅のクローズ時コメントを全件読むと、6割超=約600件は「フォロー継続」「時期未定」など、商談として死んでいない状態のまま閉じられていました(再打診余地の上限値)。消滅は、営業担当が手持ち案件を減らすための整理として運用されがちで、そこに再打診できる案件が埋まります。この約600件は経過日数つきの再打診候補リストとして納品し、そのまま営業のアクションに使える形にしました。

失注分析だけを見ている組織は、この約1,000件が視界に入りません。取りこぼしの分析は、失注ではなく「決着した引合の全件」を母数にする必要があります。

発見2——​受注率の​高い​人が、​実力の​ある​人とは​限らない

担当者の力量差は、受注率の単純比較で語られがちです。しかし全社の受注率を顧客ランク別に出すと、休眠顧客からの引合と新規顧客からの引合では、決まる確率に3倍近い開きがありました。良い客層を持つ人の受注率が高く出るのは当然で、単純比較は「客層の有利さ」を「実力」と取り違えます。

そこで各担当について「本人の客層構成なら、全社平均の決定力で何件決まるはずか」という期待値をまず計算し、実績との差で実力を測りました。たとえばある担当は、持っている客層なら決まるはずの件数の3分の2ほどしか決められておらず、良い客層での取りこぼしが処方すべき課題だと特定できます。逆に、客層の有利さを差し引いてなお全社平均を大きく上回る、転換力トップの担当も特定できました。

なお受注率は、受注÷(受注+失注+消滅)の「決着ベース」で統一しています。消滅を分母から外すと、フォロー切れの取りこぼしが受注率に表れないためです。この定義だけでも、営業データの見え方は大きく変わります。実例では、担当者間の受注率に2倍以上の開きがありました。

発見3——​上位の​営業は、​一つの​型ではない

担当約10名を序列化した結果、上位3名はそれぞれ違う形で成果を出していました。1人は「量」——全担当の受注量の約4分の1を1人で稼いでいます。1人は「質」——客層の有利不利を補正した転換力で全担当トップ。1人は「開拓」——新規・休眠顧客からの受注が全担当で最多です。営業力は一色ではなく、この3つの型を言語化すると、そのまま社内の横展開の教材になります。

序列には「恣意的な重み付けで順位を作ったのではないか」という反論がつきものです。そこで3軸(実力・量・開拓)の重みを15通りすべてに振って順位の振れ幅を測り、どの重みでも上位3名と要改善3名の顔ぶれが変わらないことまで検証しました。誰が見ても納得できる序列は、指標の設計だけでなく、この感度分析で担保されます。

自力で​やる​場合——​SFAの​標準レポートで​どこまで​できるか

この分析に、SFA側の追加設定や新しいツールは要りません。標準レポートのエクスポートがあれば、理屈の上ではExcelでも実行できます。クローズ理由別の件数集計や、担当×フェーズのピボットまでは自力で十分です。まず「消滅」に相当するクローズの件数を数えるだけでも、失注分析の視界の外がどれだけあるかは把握できます。

自力の壁は3つあります。第一に、消滅・約1,000件のコメント全件を読んで「生きている消滅」を仕分ける物量。第二に、客層補正——顧客ランク別受注率の算出から担当ごとの期待値計算までを、名寄せ・表記ゆれ・入力漏れの整理込みでやり切る手間。第三に、感度分析まで含めた「誰が見ても納得する」設計です。序列は本人たちへの説明がいちばん難しく、ここが甘いと評価そのものが受け入れられません。

外注する​場合の​判断基準と​費用

外注の判断基準はシンプルで、「集計」が欲しいのか「決着」が欲しいのかです。クローズ理由の件数集計なら自力で足ります。再打診リストという営業アクション、本人に説明できる序列と処方まで欲しいなら、全件精読と統計設計を外に出す価値があります。

ゴムマリの営業データ診断は、この実例と同じ分析——担当者別の実力評価(客層補正・感度分析つき)・取りこぼし案件の発掘リスト・改善の処方・データ品質診断——を、50万円〜(分量により・事前に固定)・納期10営業日(目安)で提供しています。まず1件、標準レポートの分量を教えていただければ、固定価格と納期を回答します。

よく​ある​質問

SFAのデータが汚くても分析できますか?

できます。名寄せ・表記ゆれ・入力漏れの整理から始めるのが前提です。この実例でも、システムユーザー等の異物を名寄せのうえ除外してから分析しています。整理の過程で見つかったデータ品質の課題も、診断の一部として納品します。

何を渡せばよいですか?

SFA(Salesforce等)の標準レポートのエクスポートだけです。この実例では引合・活動・取引先の3本で、追加のデータ取得や新しい入力は不要でした。

担当者の序列は、社内に出して問題になりませんか?

序列の断罪ではなく、改善の診断として設計します。序列は決着した案件の「成果」でつけ、本人に渡すのは「どこが強く、何を変えるべきか」の処方です。行動量で序列をつけると「動けばいいのか」という反論を生むため、成果と行動は層を分けて扱います。

次の​一歩

失注分析の外側にどれだけの取りこぼしがあるかは、標準レポートの分量を見ればすぐに概算できます。まずは営業データ診断から、お手元のSFAレポートの分量をお聞かせください。

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この記事を書いた人

代表 村山悠太のポートレート

村山 悠太(ゴムマリ代表)

国産大手ERPベンダーで新卒からERPのエンタープライズ営業・プリセールス・導入コンサル、外資系SaaSでパートナーセールス部門の立ち上げ、国内大手放送局で新規事業開発(通販カタログ事業)、AIスタートアップ2社でビジネスサイドの要職を歴任。2024年10月から生成AIを自ら実装し、2025年にゴムマリ株式会社を設立。

現在は自らAIエージェントを実装するFDE。評価セット設計・専門家監修・Go/No-Go判定、CRM・会計・社内DBとの統合、減った時間の実測まで一貫します。要件から、運用まで——AIエージェントが、現場で成果を出す仕組みを。

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