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SaaS企業の​AI活用|​プロダクトに​載せる​AIと、​社内を​回すAIは​別物——​2系統の​進め方

SaaS企業のAI活用には、プロダクトにAI機能を組み込む系統と、マーケ・営業・CSの社内業務をAIエージェントで回す系統の2つがあり、要る検証も進め方も別物です。法務領域のSaaSで実施したAI機能PoC(評価セット約100件・専門家監修・Go/No-Go判定)の実例をもとに、両系統の進め方と順番を実装企業が解説します。

著者: 村山 悠太(ゴムマリ) 最終更新: 2026年7月

この記事でわかること

  • SaaS企業のAI活用は2系統に分かれる。プロダクトへのAI機能組込(競争力への投資)と、社内業務のエージェント化(運営効率への投資)——混ぜて計画すると両方が止まる
  • プロダクトに載せるAIは、出荷前の精度検証がすべて。評価セットを設計し、専門家監修で判定基準を固め、Go/No-Goを数字で判断してから実装に投資する
  • 社内業務のエージェント化は、デジタルで完結しているSaaSの業務と相性がよい。マーケ・営業・CSの順に型があり、1業務から小さく始められる
目次
  1. 2系統を分けて考える
  2. 系統1: プロダクトへのAI機能組込——精度を出荷前に数字にする
  3. 系統2: 社内業務のエージェント化——SaaSの業務は相性がよい
  4. どちらから着手するか
  5. よくある質問
  6. 次の一歩

SaaS企業にとってAIは、プロダクトの機能でもあり、社内を回す道具でもあります。この2つは「AI活用」と一括りにされがちですが、要る検証・費用の性質・失敗の形がまったく別物で、混ぜて計画すると両方が止まります。この記事は、両系統の違いと進め方を、SaaSプロダクトへのAI機能PoCと社内業務のAI実装をどちらも手がける立場から解説します。読み手として想定するのは、SaaS・プロダクト企業のプロダクト責任者・経営者です。

2系統を​分けて​考える

系統1は、プロダクトにAI機能を載せること。 競合との差別化・解約率・単価に直結する、プロダクト投資です。失敗の形は「デモでは動いたが、本番品質に届かず出荷できない」または「出荷したが誤りが多く、顧客の信頼を損ねる」。

系統2は、社内業務をAIエージェントで回すこと。 マーケ・営業・CS・バックオフィスの運営効率への投資です。失敗の形は「ツールを入れたが定着しない」「点在する自動化が増えただけで、業務全体は軽くならない」。

投資判断の重さが違います。系統1は開発ロードマップと顧客への約束が懸かるため、着手前に「精度が出るのか」への答えが要ります。系統2は可逆で、1業務から試して結果で判断できます。以下、順に見ます。

系統1: プロダクトへの​AI機能組込——​精度を​出荷前に​数字に​する

生成AIの機能は、デモを作るのは簡単です。本番品質は別物で、とくに判定・チェック・審査のような「間違えられない」機能ほど、出荷前の精度検証が成否を分けます。

進め方の型は3段です。

  1. 評価セットの設計。 本番で来る入力を類型網羅したテストケースを作ります。精度の議論は、この評価セットがない限り印象論から出られません。
  2. 専門家監修で判定基準を固める。 「正解とは何か」を、その領域の専門家のレビューで確定します。基準が揺れたまま精度を測っても数字に意味が出ません。
  3. Go/No-Goを数字で判断する。 全件の出力をレビューし、実装に進むかを精度の実測で決めます。No-Goも成果です——投資する前に分かることに価値があります。

当社の実例では、法務領域のSaaS企業で、契約関連の法令チェックAI機能のPoCをこの型で実施しました。想定ケースを類型網羅した約100件の評価セットを設計し、弁護士監修のループで判定基準を固め、Go判定から本実装フェーズへ進んでいます(事例)。進め方と価格の詳細はAI機能PoC(サービス)にまとめています。

もう1点、見落とされがちなのは載せたあとです。モデルは更新され、入力の分布は変わるため、AI機能は放置すると劣化します。精度の継続評価と判定基準のメンテナンスを、リリース後の運用に最初から組み込んでください。

系統2: 社内業務の​エージェント化——​SaaSの​業務は​相性が​よい

SaaS企業の社内業務は、データも成果物もデジタルで完結しているものが多く、AIエージェントを入れやすい環境です。型のある領域から挙げます。

マーケティング。 コンテンツの制作・リードデータの整備・スコアリングなど、量がボトルネックになっている業務です。BtoBマーケティング全体をAIで回す設計は営業データの月額運用に整理しています。

営業。 ターゲットリストの作成・企業調査・商談データの分析です。SFAに貯まった商談データの取りこぼし分析は製造業の実例ですが、構造はSaaSの営業でも同じです(失注分析では、営業の最大の取りこぼしは見えない)。営業側の設計は営業データの月額運用にまとめています。

カスタマーサクセス・サポート。 問い合わせの一次対応・分類、そして解約理由やNPSの自由記述の全件分析です。顧客の声の分類・分析の方法はVoC分析の進め方に書いています。

いずれも、最初から全社基盤を構想する必要はありません。効いているか判断できる単位——1業務——から始めて、結果で広げるかを決めるほうが、定着まで含めて速く着きます。

どちらから​着手するか

判断の軸は「いま何が事業の制約か」です。競合がAI機能を出し、商談で「AIはないのか」と聞かれ始めているなら系統1が先です。ただし、いきなり開発着手ではなくPoCで精度を数字にしてから投資判断してください。一方、機能面の差別化は保てているが、採用が追いつかず運営が回らないなら系統2が先です。こちらは1業務・数週間の単位で試せます。

両系統に共通する注意はデータの扱いです。顧客データ・プロダクトのログを扱う以上、AIの学習に使われない処理環境と、NDAを含む契約面の整備を、着手前に確認してください。

よく​ある​質問

エンジニアが自社にいます。外部に頼む意味はありますか。

系統1のボトルネックは、実装力より評価設計です。評価セットの設計・専門家監修の回し方・Go/No-Goの基準づくりは、AI機能の検証を繰り返した経験がないと車輪の再発明になります。検証の枠組みを外部で作り、実装は内製へ引き継ぐ分担も成立します。

PoCで精度が出なかったら、費用は無駄になりませんか。

No-Goの判断材料そのものが成果物です。評価セットと判定基準は残るため、モデルが進化した時点で同じ物差しで再検証できます。「出るまで分からないまま開発に投資する」ことと比べての費用対効果で判断してください。

社内のAI活用は、ツールを契約すれば済むのではないですか。

汎用ツールで足りる業務はツールで済ませるべきで、そこに構築は不要です。エージェント化が効くのは、自社の業務フロー・データ・判断基準に合わせた作り込みが要る業務です。この線引きの見極めから相談に乗ります。

次の​一歩

プロダクトに載せたいAI機能があるなら、精度を数字にするところから。社内の運営が制約なら、効く1業務の特定から。どちらの入り口でも、お問い合わせからご相談ください。

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この記事を書いた人

代表 村山悠太のポートレート

村山 悠太(ゴムマリ代表)

国産大手ERPベンダーで新卒からERPのエンタープライズ営業・プリセールス・導入コンサル、外資系SaaSでパートナーセールス部門の立ち上げ、国内大手放送局で新規事業開発(通販カタログ事業)、AIスタートアップ2社でビジネスサイドの要職を歴任。2024年10月から生成AIを自ら実装し、2025年にゴムマリ株式会社を設立。

現在は自らAIエージェントを実装するFDE。評価セット設計・専門家監修・Go/No-Go判定、CRM・会計・社内DBとの統合、減った時間の実測まで一貫します。要件から、運用まで——AIエージェントが、現場で成果を出す仕組みを。

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