ホーム / ナレッジ / クリニックの集患は計測から——「何が効いているか」に実数で答える手順
集患のためにHP・広告・SNSへ支出しながら、どれが効いているか実数で答えられない——その原因は施策ではなく計測にあります。当社が支援する都内クリニック(匿名)でSearch Consoleの計測を院側に取り戻し、3か月・表示1.7万回の実測データから真因と打ち手の順番を導いた記録です。
著者: 村山 悠太(ゴムマリ) 最終更新: 2026年7月
この記事でわかること
集患のためにHP・広告・SNSへ毎月支出しながら、「どれが効いているのか」に実数で答えられない——開業クリニックの多くがこの状態にあります。この記事は、当社が支援する都内のクリニック(匿名)で計測を院側に取り戻し、検索の実測データから打ち手の順番を導くまでの記録です。結論を先に書くと、集患改善の第一歩は新しい施策ではなく、計測アカウントの権限の回復です。読み手として想定するのは、集患を外部パートナーに任せているクリニックの院長・事務長です。
このクリニックの支援を始めたとき、最初に確認したのは施策ではなく計測アカウントの所在でした。結果は次のとおりです。アクセス解析(Google アナリティクス)、広告アカウント、計測タグ(Google タグマネージャー)はいずれも制作・運用パートナー側の管理で、院側に閲覧権限がない。院長が見られるのは月次レポートの要約だけ。つまり、流入・予約転換・広告単価という判断材料の原本に、発注者であるクリニック自身が触れない状態でした。
これは誰かの怠慢ではありません。開業時にHP制作と広告運用を一括で外部に頼めば、計測アカウントは作業者である外部側で開設されるのが自然で、標準的な分業の帰結です。ただしこの状態のままでは、「広告を増やすべきか、HPを直すべきか、SNSか」という順番の判断が、実数ではなく印象で決まります。
計測の回復には交渉が要るもの(アナリティクス・広告・タグの権限付与)と、院側だけで今日できるものがあります。今日できるのがGoogle Search Console(検索データの計測ツール・無料)です。理由は3つあります。
このクリニックでは、院側アカウントでの登録当日に、直近3か月の実数——クリック・表示回数・検索語・掲載順位——が閲覧できる状態になりました。なお、確認タグの設置はサイトの改変にはあたりませんが、保守契約の管理範囲との無用な摩擦を避けるため、外部パートナーへの一報は済ませておくことをすすめます。
回復した計測が示した直近3か月の全体像です。数値はSearch Consoleの実測値がもとです(特定を避けるため丸めています。以下同じ)。
| 指標 | 実測値 |
|---|---|
| クリック | 約1,700 |
| 表示回数 | 約1.7万 |
| CTR(クリック率) | 約10% |
| 平均掲載順位 | 約8 |
これを「指名検索(クリニック名・院長名)」と「非指名検索(症状・疾患・地域の一般語)」に分けると、構造が見えます(区分は上位検索語からの概算です)。
| 区分 | クリック | 表示回数 | CTR |
|---|---|---|---|
| 指名 | 約900(53%) | 約1,900(11%) | 約5割 |
| 非指名 | 約800(47%) | 約1.5万(89%) | 約5% |
指名検索はCTRおよそ5割——クエリによっては65%——で、これ以上ない取れ方をしています。問題は非指名です。表示の89%——約1.5万回——は症状や地域で検索した、まだこの院を知らない人への表示なのに、そのCTRは約5%。クエリ単位で見れば大半がほぼ0〜3%です。 検索結果に「見えているのに、取れていない」。これがこの院の集患の全体構造でした。
ページ別に見ると偏りはさらにはっきりします。クリックの約9割がトップページに集中し、個別の症状解説ページは、最大のもので3か月に約2,900回表示されながらCTR約1%でした。専門性で勝負すべきページが、自分の検索語で勝てていない状態です。
なぜ取りこぼすのか。データとサイトの突き合わせで、真因は2つに絞れました。
真因1: 全ページのタイトルが定型文で埋まっていた。 各ページのタイトルは90文字を超え、後半の約70文字は全ページ共通の定型(駅名・診療内容の列挙)でした。ところが検索結果でタイトルが表示されるのは、モバイルでおよそ28〜32文字まで。つまり各ページ固有のテーマ語の直後で切れ、クリックを誘う情報が画面に一切出ていなかったのです。さらに、患者が実際に打つ検索語とページ側の用語表記が食い違っており(一般的な言い換え・略語がタイトルに入っていない)、表示はされてもクリックされない条件がそろっていました。多くの場合、この定型はSEOプラグインやテーマのテンプレート設定で一括付与されており、設定1か所の変更で全ページに効きます。
真因2: 地域の一般語は、地図枠に流れている。 「症状名と地域名」の組み合わせで掲載順位1位前後を取りながら、クリックが0〜2件の検索語が複数ありました(表示は各200〜600回)。通常の検索結果で1位・0クリックはまず起きません。医療と地域名の検索結果は、最上部を地図枠(Googleビジネスプロフィールの上位3枠)と医療ポータルサイトが占めることが多く、自然検索の順位が高くてもクリックがそちらへ流れる——これが最も整合的な説明です。ただしこの時点では実際の検索結果画面の目視確認を残しており、確認までは仮説として扱いました。
診断が実数で立つと、打ち手の順番はほぼ自動的に決まります。
ひとつ注意があります。タイトルやページを書き換える際は、医療広告ガイドラインの制約——治療効果の断定、患者の体験談、最上級表現などの禁止——が常に掛かります。一般業種の集患コピーの定石をそのまま持ち込めない領域なので、書き換えの工程には表現チェックを組み込んでください。
施策の前に、5つの計測資産の権限がいまどこにあるかを確認してください。
ひとつでも「分からない」があれば、次の施策より先に計測です。Search Consoleの登録自体は院内で1日あればできます。一方、回復したデータから真因を診断し、打ち手の順番を設計する部分は検索データを読む経験に依存するため、そこだけ外部の目を入れるという分担も成立します。
サイトの管理を制作会社に任せたままで、Search Consoleに登録してよいのでしょうか。
技術的には問題ありません。Search Consoleは複数の所有者を同時に登録でき、既存の登録や設定、サイトの表示には影響しません。ただし保守契約で管理範囲が定められている場合があるので、確認タグを設置する旨は事前に一報しておくのが円滑です。
過去のデータはどこまで見られますか。
Search Consoleは所有権の確認時点にかかわらず、そのサイトの検索データを最大16か月分さかのぼって表示します。一方、アナリティクス(GA4)は計測タグを設置した日以降のデータしか収集されないため、院側で新しく計測を始めても過去分は空です。過去データを見るには、既存の計測アカウントへの閲覧権限の付与を交渉することになります。交渉なしで過去までさかのぼれるSearch Consoleが先、という順番はここから来ています。
診療科によって手順は変わりますか。
計測の回復と診断の手順は診療科によらず同じです。変わるのは検索語の中身で、症状語の量と競合の構造は科によって大きく異なります。だからこそ、一般論ではなく自院の実測から打ち手を決める意味があります。
費用はどのくらいかかりますか。
Search Consoleの登録・利用は無料で、院内で完結します。診断から施策の実装・効果測定までを外部に頼む場合の当社の進め方と価格はクリニック集患支援(サービス)に掲載しています。
ゴムマリのクリニック集患支援は、施策の提案からではなく計測の回復から始めます。効いているかどうかを実数で確かめられない施策は、続ける判断も止める判断もできないからです。現状の計測権限の確認からで構いません。クリニック集患支援(サービス)からお問い合わせください。
国産大手ERPベンダーで新卒からERPのエンタープライズ営業・プリセールス・導入コンサル、外資系SaaSでパートナーセールス部門の立ち上げ、国内大手放送局で新規事業開発(通販カタログ事業)、AIスタートアップ2社でビジネスサイドの要職を歴任。2024年10月から生成AIを自ら実装し、2025年にゴムマリ株式会社を設立。
現在は自らAIエージェントを実装するFDE。評価セット設計・専門家監修・Go/No-Go判定、CRM・会計・社内DBとの統合、減った時間の実測まで一貫します。要件から、運用まで——AIエージェントが、現場で成果を出す仕組みを。