課題
発注実績は基幹システムに正確に溜まり続けている一方、明細の品名は自由記述で、費目の粒度もそろっていませんでした。「どこに・いくら使っているか」を同じ物差しで見られない状態です。人手で全件を分類し直す時間はなく、分析はサンプル抽出か金額集計止まりになっていました(数値はいずれも概数です)。
会計上の勘定科目はありますが、これは決算書を作るための区分です。消耗品費や雑費といった受け皿に性質の違う支出がまとめて落ちるため、支出の中身を見る軸としては使えませんでした。
やったこと
1. 分類体系を、実データの品目一覧から作る
既存の勘定科目を流用せず、明細から品名のユニーク一覧(約320品目)を作り、そこから費目を起こしました。束ねる基準は「この2つを同じ箱に入れたとき、意思決定が変わらないか」の一点です。結果として約30の費目に落ち着きました。費目の数は目標値ではなく、この基準で切った結果です。
2. 境界ルールを、分類を始める前に文章で決める
どちらの費目とも取れる品目は必ず出ます。これを分類しながら都度決めると、最初の100行と最後の100行で違う基準が通り、集計した瞬間に数字が意味を失います。迷いそうな組み合わせを先に列挙し、どちらに寄せるかと理由を1行ずつ書き切ってから着手しました。この文書がそのまま納品物の判断基準シートになります。
3. 機械的に決まる行は、決定論ルールで先に確定する
品名が空欄・機械的な文字列のみ・会社名のみの行、内部振替、名称で費目が一意に決まる送料や手数料は、モデルに判断させずルールで確定しました。判断の要らない行に判断を通すと、そこにも誤りが生まれるためです。
4. 全件を2回独立に分類し、食い違いだけを裁定する
同じデータを、同じ体系・同じ境界ルールで2回独立に分類し、結果が食い違った行だけを裁定しました。怪しい行を勘で探す必要がなくなります。判断が割れた行は、境界ルールの穴か品名の情報不足のどちらかを示しているため、前者ならその場で境界ルールを更新しています。
5. 独立監査で実誤り率を実測してから納める
納品前に、最終結果を知らない別の担当がゼロから再分類し、最終結果と突合して食い違った行の割合を出しました。これが実誤り率です。分類した本人は監査に入れていません。同じ思い込みが2回通るだけだからです。
修正にも規律を置きました。独立した2名以上が同一の別カテゴリで合意した箇所だけを修正するという規律です。1名の指摘で機械的に直すと、正しかった行を壊す事故が起きます。指摘は1票であって判定ではありません。
納品物
費目分類済みの明細一式、同一商品の単価差一覧、判断基準シート(境界ルールと要確認行)の3点です。品名の情報だけでは費目が確定しない行は推測で埋めず、要確認として分けて出しました。
結果
約700件・約320品目を約30の費目に全件分類し、実誤り率は全体で約1%、金額加重では1%未満でした。完了基準(全体2%以下・金額加重1%以下)を着手前に数字で置き、それを満たしたことを実測で確認してから納品しています。金額加重の基準を別に置くのは、件数が少なく金額の大きい行の誤りを、全体の率が薄めてしまうためです。
同一商品で単価が異なる組み合わせを約70件抽出し、単価交渉・発注集約の検討材料として渡しました。この一覧は何をキーに「同一商品」としたかを明記して納品しています。サイズや規格をキーに含めるかどうかで、抽出される差額が「高買い」を映すか「仕様差」を映すかが変わるためです。
その後
同じ型(分類体系の設計・決定論ルールの前段・2回独立分類・独立監査による実誤り率の実測)を複数のデータに適用し、納品の型として確立しています。手順の詳細は発注明細の費目分類のやり方に公開しています。