課題
製造マニュアルの多言語化には、原文と訳文を文単位で対応づけた「対訳データ」の整備が欠かせません。しかし機種ごとに章立ても用語も異なり、そのたびに人手で時間をかけて整備し直す——属人的で、終わりのない作業になっていました。
やったこと
まず実データで対訳データ構築のパイプラインを作り込み、品質の出る手順を確立。そのうえで工程を機種に依存しない形につくり直し、現場が自分で回せる専用ツールにまとめました。新しい機種は「自動で章立てを検出 → 対応表を目視で確認 → 生成」の3ステップで処理できます。サンプリングではなく対象を全件精読する検証の規律も組み込みました。
難しかったこと
前の機種の設定が、次の機種でそのまま使えない。 章立ても用語も図番号の付け方も機種ごとに違い、前回の設定を流用すると対応づけが静かにずれます。機種ごとに現物を確かめる工程を先に置き、機種に固有の情報は設定ファイルと章の対応表に集めました。
並び順と長さだけで対応づけると、途中から崩れる。 片方の言語にだけ加筆がある区間に入ると、それ以降の対応づけがまとめてずれます。意味の近さで対応づける方式へ切り替え、それでも残るずれは人が見て付け直す前提で工程に組み込みました。
抜き取りの検証では、まとまった誤りを見落とす。 同じ原因で連続して起きている誤りは、サンプリングだと例外として過小評価されます。全件を読み通す検証を工程に入れ、ツールの出力は完成品ではなく、確認前の下書きと要確認リストという形にしました。
納品物
対訳データ構築の専用ツール一式(運用手順書つき)と、品質検証レポート。実データでの検証では、抽出・統合の工程は人手の成果物をそのまま再現し、文の対応づけの整合精度は9割超を確認しています。
その後
「人が居なくても回る状態にして次へ」——FDEの完成形である“仕組みを残す”ところまで到達しました。機種が増えても現場が自走でき、当社が都度入る必要がありません。繰り返し効いた型は、ほかの文書領域へも広げられます。
同じ型が効く業務
「対象が変わるたびに、同じ作業を人手でやり直す」業務は、マニュアルの多言語化に限りません。当社の経験では、製品ごとに作り直す仕様書や試験成績書、案件ごとに整え直す契約文書の対訳、拠点ごとに書式の違う帳票の突合などが同じ形をしています。
この案件では、最初から汎用のツールを設計せず、まず1つの対象で品質の出る手順を確立し、そのうえで対象ごとに変わる部分だけを設定へ追い出しました。何が対象ごとに変わるのかは、1周やってみるまで分かりませんでした。
