課題
加工の工程見積(部品ごとに工程の並びと工数を書いた見積)は、新しい製品や設計変更のたびに作ります。実際の作業は、似た見積を記憶を頼りに探し当て、コピーして直すことでした。新しい治具(加工や組立で部品を固定し、位置を決める道具)は参考にする治具の見積をもとに起こし、新しい部品は似た形状の部品の工数を写します。
お客様からは、リスクが低いので早めに AI に任せたいというお話がありました。
やったこと
1. どの前例を写すと合うのかを、実測で決める
前例を増やす前の見積 約2,800部品について、1部品ずつ、答えになるファイルを前例から外して下書きを作り、実際の見積と比べました(数値はいずれも概数です)。
工程の並びまで完全に一致した割合は、工程の決まりを当てて作る方式で全部品の約8%、品名と材質が同じ前例を写す方式で、その前例がある部品の中で約44%です。図番か品番が同じ前例を写す方式では、同じ前例がある部品(約7割)の中で約84%でした。この結果から、図番か品番が同じ前例を写す形を下書きの軸にしました。
2. 入り口を部品表にする
部品表を画像かデータでチャットに添付すると、下書きを様式のファイルで返します。入り口を部品表にしたのは、お打合せで伺ったご意見によるものです。
下書きは記録の表に1回1行で記録し、行のページにファイルと判断が要る項目の一覧を添えます。9月に実際の画面で測った所要は、部品表から約3分半でした。
3. 前例を増やし、確定した見積を足せるようにする
治具の見積 約8,500件を前例に取り込み、前例は約8万部品になりました。確定した見積をチャットに添付すれば、前例へ足せます。足した分は、次の下書きから使われます。
難しかったこと
前例は、製品と治具で分ける。 同じ場所に混ぜると、治具の部品が製品の見積を前例に引くことがあります。実測では、そうなった約500件で工程の並びが合ったのは約1%でした。図番の重なりもほとんど無く、製品と治具は別の前例として扱いました。
材料の値は、確からしく当てない。 材料コードと材料寸法は部品表にありません。同じ品番でも見積ごとに材料コードが違うことがあり、寸法は図面が無いと決まらないものです。そこで前例から引いた値は様式に書いて見せつつ、同じ品番から引いた値も含めてすべて確認が要るものとして返します。
部品表の文字の読み取りは、回ごとに揺れる。 部品表は半角カナで印字されていて、同じ画像でも濁点や半濁点の読みが変わることがあります。読みが前例と合わないときは、確認が要るものに落とします。様式に書く文字はプログラムで半角に戻し、見積の表記と揃えました。
納品物
下書きの作成と前例の追加の Notion AI への指示書、下書きを作るページ、コードの一式、下書きの記録と前例の追加の記録のデータベース、全体で最初に開くページです。
その後
担当の方が実際の部品表で2度お試しになりました。いただいたご意見をもとに、部品表の様式ごとの読み方、確認が要る項目の並び、購入品の見せ方、参考の値の書き方を直しました。今は、繰り返し使う部品の写し方と、確定した見積を足す流れをお客様と詰めています。
Notion で頼めることの全体は、Notion の構築と開発にまとめています。
同じ型が効く業務
過去の書類を探して写し、直して出す仕事は、工程見積に限りません。修理の見積、仕様書、作業の手順書なども同じ形です。
この案件で効いたのは、作る前にどの前例を写すと合うのかを測ったことでした。決まりや品名で当てるより、同じ図番や品番の前例を写すほうが再現できると分かり、残りを確認が要る項目として人に渡す形に決められました。
