課題
お客様は、新しい案件の加工プログラムを作るときの手がかりとして、過去の案件を Notion の表に登録し、似た形状の案件を探せるようにしていました。表に入れば、図面や加工の手順書、加工プログラム(加工機を動かすプログラム)の内容を AI も読めます。
ただ、この登録が最も重い作業でした。登録できていたのは二十数件で、手元には過去の案件が約700件・約1万6千ファイルあります(数値はいずれも概数です)。形状の項目は図面を読まないと埋まらないため、同じ水準を人の手で全件に広げるのは現実的ではありませんでした。
やったこと
1. 書き込み先は、お客様の表と同じ項目の別のデータベースにする
お客様の登録の表には書き込まず、同じ列(集計の列を除く約40列)と同じ並びのビューを持つデータベースを作りました。お客様の表の運用を止めずに、中身を見てご意見をいただけます。
2. 自動で読める範囲を、先に全件入れる
機種・材質・図面の所在・加工条件といった項目と、案件のページの本文を自動で組み立てて入れました。加工プログラムの全文や工程の内容は添付のままにせず、AI が読める本文にしています。この段階の投入は約3時間で、エラーなく終わりました。
3. 図面を読む項目は、10件で確かめてから広げる
形状の分類や特徴、公差(寸法の許容範囲)のレベルは、図面を AI に読ませて下書きを作ります。まず10件を入れてご確認いただき、その後に残りへ広げました。
進め方は、お客様が決めていた手順の順番に合わせています。AI が図面と作業指示書だけを読んで工程を立て、その後で実際の工程と比べる流れです。AI が入れた値には推定を含む印を付け、値ごとの出どころと、判断に迷った点をそれぞれ列に残しました。
4. 案件ごとの資料のページと、改善の候補の一覧まで作る
お客様のご依頼を受けて、案件ごとの資料のページを作り、案件につなげました。AI が立てた工程と実際の工程を比べて見つかった改善の候補も、9本の一覧にまとめています。
難しかったこと
ファイルの名前は、中身を保証しない。 元のフォルダには、別の部品や隣の案件の加工の手順書が混ざっていました。名前で手順書と分かるだけでは選べません。手順書の頭の欄にある部品番号と部品名を、作業指示書から読んだ値と加工プログラムの頭のコメントに照らして選ぶ形にしました。これで決まらない案件は、候補の Excel を並べ、図面の表題欄とも照らして確かめています。
図面の多くはスキャンで、書類の種類もファイル名では決まらない。 無作為に抜いた80本の PDF のうち約7割は、画像だけのスキャンでした。1つの PDF に作業指示書や図面、加工プログラムの印刷が混ざることもあります。そこで約7,700ページをページごとに自動で測り、AI の画像読み、文字の読み取り、文字の層からの取り出しのどれを当てるかを書類の種類ごとに決めました。
資料が無いものは、埋めずに印を付ける。 原本に資料が見当たらない約30件は、行を残して保留の印を付けました。図面に根拠が無い公差のレベルは空欄です。埋まっている値を検索の根拠にする以上、推定で埋めた値と資料から読んだ値が区別できることを優先しました。
納品物
案件の一覧のデータベース(約700行)と案件ごとのページ、案件ごとの資料のページ、改善の候補の一覧9本、全体で最初に開くページです。
その後
お客様はこのデータベースをお持ちの似た形状の検索の対象に入れ、加工プログラムの作り方の分析にも使っています。10月のお打合せでは、入れたデータはうまくいっているとの評価をいただき、登録の表とは分けたまま、ご意見を受けて直していく進め方を確かめました。
Notion で頼めることの全体は、Notion の構築と開発にまとめています。
同じ型が効く業務
過去の記録がフォルダにたまり、登録の手間で検索の対象に入れられないものは、加工の案件に限りません。設計の図面、検査の記録、保全の報告書なども同じ形です。
この案件で効いたのは、人が使っている表と同じ項目に合わせたことと、自動で読める範囲と図面を読む範囲を分けて、先に全件を入れたことでした。少数で確かめてから広げたので、下書きの形をご確認いただいた上で残りに進めました。
